グラスシード・ドリーミング Grass Seed Dreaming

バーバラ・ウィア
Barbara Weir

アボリジニにとって広大な大地は自らを創り出してくれた偉大なる母であり、また死後に自分の魂が再び戻っていく神聖な場所であると語られる。

作者はアイルランド人の父を持つ混血児であったことから当時のオーストラリア政府の親子隔離政策により、幼い頃に(当時9歳)母親から強制的に引き離されて「オーストラリア白人社会」への順応を余儀なく要求された体験者である。そのため家族の待つ自分の故郷へ一日も早く戻りたいと幼い頃から日々心から願っていたという。

この作品には彼女がついに自分のふるさとへ戻れた大きな喜びと自らを快く受け入れてくれた大地への深い感謝の気持ちが込められている。

乾燥したオーストラリアの中央砂漠で長い間暮らしてきたアボリジニたちの間ではわずかな水と植物の種子などが貴重な食料とされており、その種を細かくつぶして砕いたあと水と混ぜて『ダンパー』と呼ばれる無発酵パンを作って食していた。この作品に描かれているリズミカルな筆づかいは広大なオーストラリア大地で風になびくそれらの植物の葉をモチーフにしており、作者バーバラ自身が過酷な自然条件の中で自ら培った食物採集に関する様々な情報も込められている。

いまや世界中にコレクターが存在するなどアーティストとしても瞬く間に名声を上げた作者は日本のメディアにも多数出演している。

(TBS 世界ウルルン滞在記、NHK 新日曜美術館、TV東京 美の巨人たち)来日経験はこれまでに5回。

また、アボリジニが生んだ天才画家である故エミリー・ウングワレ―と生前最も近しい間柄だったことから2008年には大阪国立国際美術館・東京国立新美術館で大々的に開催されたエミリー・ウングワレー展においてオフィシャルゲストとして日本へ招かれた。