グラスシードドリーミング Grass Seed Dreaming
アボリジニの人々にとって広大なオーストラリアの大地は自らを創り出してくれた偉大なる「母」。
作者はアイルランド人の父を持つ混血児であったことから当時のオーストラリア政府の親子隔離政策( Stolen Generation )により、幼い頃に(当時9歳)母親から強制的に引き離されて「オーストラリア白人社会」への順応を余儀なく要求された体験者である。そのため家族の待つ自分の故郷へ一刻も早く戻りたいと日々願っていたという。
故郷をあとにしてからおよそ20年の歳月が過ぎた頃、作者の念願がやっと叶い自分の生まれ育ったカントリーへ再び戻ることとなった。
この作品には自分とカントリーのコネクションを再確認できた大きな喜び、そして長い年月を経ても快く受け入れてくれた家族への深い感謝の気持ちが込められている。
乾燥したオーストラリアの中央砂漠で長い間暮らしてきたアボリジニの人々はわずかな水と植物の種子がとても貴重な食料とされており、その種を細かくつぶして砕き、水と混ぜて『ダンパー』と呼ばれる無発酵パンを作って食していた。この作品のリズミカルな筆づかいは広大なオーストラリア大地で風になびくそれらの植物の葉をモチーフにしており、作者バーバラ自身が過酷な自然条件の中で自ら培った食物採集に関する様々な情報も込められている。
いまや世界中にコレクターが存在する著名画家として瞬く間に名声を上げた作者は日本のメディアにもこれまで多数出演をしている。(TBS 世界ウルルン滞在記、NHK 新日曜美術館、TV東京 美の巨人たち)
大の親日家でこれまでの来日経験は5回。2008年には大阪国立国際美術館・東京国立新美術館で大々的に開催された「アボリジニが生んだ天才画家・エミリー・ウングワレー展」において故エミリー・ウングワレ―とは生前誰よりも近しい親族のひとりだったことからオフィシャルゲストとして日本へ招かれた。
現在はアリススプリングスに在住。画商たちの精力的なプロモーションにより、日々作品の制作に大忙しである。