マイカントリー My Country

ビバリー・バートン

作品に描かれている同心円は、アボリジニの女性たちの伝統的な儀礼が行われるキャンプ地《集合場所》を表し、そこは遥か太古に大地の精霊たちが水場を探し求めながら旅をした旅程/地図でもあったという。

アボリジニの女性の儀礼には重要でかつ神聖な情報を自分達の次の世代へ確実に伝承するという大きな役割がある。

これは水一滴ない砂漠の過酷な自然条件の中で“生きる”ために欠かせない知恵であり、その伝達のために行う儀礼には、必ず自分たちの身体(肩・胸元・乳房部分)に“ボディ・ペイント”を描き、それには部族の歌・踊りを伴いながら、アボリジニの女性たちは何よりも大事な伝達の記録として幼い頃から記憶をする。

もともと「読む」「書く」といった文字を持たない無文字社会で生きるアボリジニの人々にとって、絵を描くということは決して芸術のためではなく、ビジュアルな言語として(視覚で記憶する文字に代わる記号のようなもの)これまで何千世代にも渡って伝承されてきた文化・歴史・ライフストーリーそのものなのである。