ワイルドピジョン・ドリーミング Wild Pigeon Dreaming

ハロルド・パイン

最近人気を高めているアボリジニ男性作家の一人で、女性画家の活躍が目立つユトーピアコミュニティでは稀な存在である。コミュニティ内のアートアドバイザーたちの精力的なプロモーションもあり、近年では豪州国内においてグループ展などへ数多く出展されている。

農耕も行わず家畜も飼わなかったアボリジニの人々は、水一滴ない乾燥したオーストラリアの中央砂漠で狩猟採集社会を営みながら、全て野生のものだけで5万年もの長い歳月を生き長らえてきた。

ワイルド・ピジョンは野鳥の一種で、彼らの大事な食料でもある。作品はその野鳥が水場(作品中央に描かれている同心円)を探し求めながらカントリーを移動している様子を描き、アボリジニの人々がその野鳥の足跡をくまなく追跡することで同時に水場のありかも突き止められるという、大自然で生き抜くためのまさに一石二鳥のバイブルなのであろう。