今回は、頂いたお便りやよく聞かれる質問にお答えいたします。皆さんもアボリジナルアートに関してお知りになりたいことがあれば [email protected] まで、お気軽にご質問ください。

##1. アボリジナルアートは一つ仕上げるのにどれぐらいの時間がかかっているのですか?

うーーん、これは非常に難しい質問ですね。・・・というのもこれは作者の手法によって大きく異なりますから。砂漠の砂絵のイメージから来る点描(ドット)をたくさん用いる作者は、サイズ90センチ×60センチのキャンバスをおよそ一週間から10日ほどかけて制作します。

それに比べてライン(線)を主体とする作者は早い人で30分ほどで仕上げます。・・・・が、これらは本当に大まかな目安でしかありません。

お忘れになってはいけないのが彼等の絵画の制作はアトリエやスタジオではないということです。砂漠の大地の上で、そして青空のもとでの作業になりますから、天候にも大きく左右されますし、作品が売れるとその場で彼等は現金をもらいます。自分の家族がお腹をすかせている時にはさっさと作品を仕上げて、さっさとお金をもらうというサイクルにもなっていますから、絵画のクオリティも大きく差異することになるわけです。

##2. アボリジナルアートに宗教的意味はありますか?

読む・書くといった「文字」を持たないアボリジニにとっての絵画は次の世代に砂漠で暮らす為の様々な知恵を伝達する大事な教育の意味があります。

また、彼等が独自に持っている世界観も同時に絵画によって表現されますから、もちろんそこには宗教的、哲学的要素は大きく含まれます。一見抽象的に見えるアボリジナルアートですが、そこにはそれぞれストーリーがあるのでそれを解読する面白さも一緒に楽しんで見てください。

##3. アボリジニの方々は売れた作品の収入をどのように使っているのですか?

これは実に多くいただく質問のひとつです。まず、「お金」という概念が私たちと全く違っているということをご理解いただきたいですね。もちろん「貯蓄」をするという考えもありませんから、絵画によって得た収入は瞬く間に消えてしまうことがしばしばあります。有名な画家になるとかなりの現金収入を得るのですが(一日数千ドル)私有財産を持つという概念が無い彼等は、その収入を居住区で自分の家族(アボリジに特有の親族制度があります)に毎回均等に配当をしたりします。現在はアボリジニ居住区の中にもスーパーマーケットがありますからそこで食料品を購入し、また街へ出掛けて映画を観たりショッピングを楽しんだりもします。

##4. 今後の展望は?

私の人生にアボリジナルアートが登場してきてまだわずか8年です。これまでいろいろなものに興味を持ってきた自分ですが、その中でもなぜこんなにもアボリジニに魅せられるのだろうと考えることはあるのですが、まだ明確な解答は得られていません。

日本での「アボリジナルアート展覧会」は私の大きなゴールのひとつでした。現在、その日本での巡回展が実現したことをこのうえない喜びだと思っています。これまで自分が長い間思い描いてたものがようやく「カタチ」になったという、大きな自信にもつながりました。

今後はこれをスタートに日本のアート業界へ新しいユニークな芸術として、アボリジナルアートをもっともっとご紹介していきたいですね。

11月にはアボリジニの画家を日本に連れて行く予定です。それにあわせて小さな個展も考えています。アボリジナルアートに出会って私のハートが素直にときめいたように、ひとりでも多くの方々にこの絵画の持つ温かさとパワフルさを感じていただけたらと思っています。

私のアボリジナルアート熱はまだまだ当分冷めそうもありません。