日本でアボリジナルアート展を開催すること。これは私の人生に初めてアボリジナルアートが登場してきたときから抱いていた大きな大きな夢であった。

その「夢」が、いつの間にか具体的な「目標」に変わり、やがてそれが「実現」という”カタチ”になるまでには実に長い道のりを経て、それはそれはたくさんの仲間たちに心強く支えられたものだ。

“茨城県古河市の三越展示場が、どうやら2006年3月に空いているらしい…”。そんな申し出を古河市在住の仲間から受けたのが今から4ヶ月ほど前。

それならまずは会場を下見してこよう!とすぐに現地へ赴く。…といっても電車に乗って30分後に到着するような距離にオレ様は住んじゃいないからね。何たってはるか8500kmも離れた海のこっち側から、エッコラエッコラ日本へと出向いて行かねばならないのだが、それを「苦労」だとはちっとも思っちゃおらず、逆に先方様に「まさかオーストラリアから、こんなにも早くお越しいただけるだなんて。内田さんの展示会開催への熱い情熱を感じます」。なーーんてうまい具合に思わせちゃったりするのだからしめたもんだぜ。

打ち合わせには三越本社からも担当者が足を運んで下さり、古河店の店長さんを交えてトントン拍子に話が進み、めでたく3月21日から2週間の展覧会開催が決定した。

会期中はできる限り展示場へ常駐し、一人でも多くのお客様にアボリジニの深遠なる文化・そしてひときわユニークなその芸術を熱く訴えた。朝10時オープンから午後6時閉店まで、もう途中でぶっ倒れてもいいからという覚悟で、ただただひたすら自分が魅せられたアボリジニのすべてを語った。

とにき喉を潤すためにウーロン茶を控え室で一気に飲み干し、差し入れでもらったできたておにぎりを一つ夢中でほおばる。歯に海苔が付いてやしないかと手鏡で「にぃーー」と歯をむき出しチェックしたあと、口紅を塗りなおして再び会場へ。その間、携帯電話も鳴りっぱなしだ。

茨城県古河市は東京都心から電車でおよそ1時間半の場所に位置するのだが、必要に応じて都内でのミーティングをいくつかやっつけなければならないこともあったため、重たいカバンを持って東京―古河を何度か往復することも。

履き慣れないハイヒールでふくらはぎはパンパンにムクみ、資料が詰まったカバンを担ぐ肩もカチカチになった。身体はボロボロでもお客様にはそんな素振りは一切見せない。疲れたからといって決して手抜きをしない。これはプロフェッショナルとして当たり前のことだと確信する。

「内田さんって本当にタフですよネエ。どこからそのエネルギーが湧き出てくるんですか?」と三越の小林店長。

そう、このエネルギーが恋愛にも大いに発揮できたら…とたまに深くため息をつくことがある。そうれすればオレ様も今ごろは、大変シアワセな家庭を築くマダムに変身していたはずだ。

「あなた、お帰りなさい。今日もお疲れ様だったわね」とか何とか言っちゃって、花柄のワンピースなんか着て、冷たいビールを差し出していたはずなのだ。

自らこんなことを申すのは、誠にずうずうしく申し訳ないことは重々承知なのであるが、実はオレ様、恋愛に関してはかなりの奥手であるということを告げようではないか。

もちろんこれまでには人並みに恋をして、ウカレポンチになったことも、涙を流してトイレで号泣した経験もたくさんある。

当時、まだ携帯電話という便利なものがなかったころ(←じゃあ、相当前の話じゃろ)、付き合っていた男性からの電話を受けるために友人との食事も断って一目散に帰宅したのに、いくら待ってもかかってこない…。ベッドにつっぷして傍らの電話をうらめしそうに見つめていたけど、それでも電話のベルは鳴らないので、近くにあった雑誌を取り合えず読んで待ってみるが、そんなのちっとも頭に入らない。そのうちに夜の12時を過ぎてしまったので、そろそろお風呂に入らなきゃと腰を上げるが、もしその間に電話がかかってきたらどうしよう…と不安に駆られ仕方がない。電話のコードを引っ張ってきてバスルームの前に置き、電話がすぐ取れるようにドアを少し開けてお風呂に入るが、頭を洗ってても気が気じゃない。だってすすぐときに頭からお湯をかぶっていたら電話のベルは聞こえないのだから…とそんな心配が頭をよぎったその時やっと、電話が鳴った。オレ様は泡だらけの身体で電話めがけて猛ダッシュで飛び付く。

「あ、もしもし。遅かったのね。どうしてたのぉぉぉぉ~~~~」と泡が目に入って痛かったけど、それを我慢して一生懸命平常心を装うオレ様。「ごめんねー。遅くに電話して。ねえねえ。聞いてよ。私の彼ったらさぁー…」と受話器の向うから聞こえてきたのは、最近新しい恋人ができた女友達からだった。「大した用事でもねーのに、こんな時間に電話なんかしてくんじゃねーよ!!!」と勝手に怒りをその女友達にぶつけまくり、すぐさま電話を切ったあとの虚しさと悲しみを今でも鮮明に覚えている。

私は幼少の頃から人と同じことをしない変わり者だと言われていて、それは人に流されない意思の強さを持った個性的な人間のことなんだ、と勝手にそう思ってきた。時には男好みのヘアメイクを研究し、他人様と同じように遊んでみるのも楽しいのであろうが、私は上品なギフトボックスに並べられている高級チョコレートには到底なれっこない。大袋に堂々と詰められたでっかい草加せんべいでありたい、とよくわからんことをいつも考えている。

2週間の展示会は大大大成功のもと、無事幕を閉じた。そしてこれを機に今年は日本全国でのアボリジナルアート展開催が次々と確定したことは大いに喜ばしいことである。

「夢」を「目標」と化し、それを「現実」のものとするためこの展覧会に関わってくださったすべての仲間達に、この場をお借りして心から御礼を申し上げたい。

アボリジニ絵画展 名古屋にて開催決定!
アボリジニ絵画展「アボリジニの文化に学ぶ」
同朋大学「ギャラリーDO」
2006年5月15日(月)~5月20日(土)
問い合わせ先: 同朋学園本部事務局総務部企画課
Tel 052-411-1111